異分野融合イノベーションによる新産業形成の方法論の研究 博士論文 ; Research on Methodologies for New Industry Formation through the Interdisciplinary Innovation

多摩大学大学院経営情報学研究科 ; 博士（経営情報学） ; 2023 ; 本研究では、日本がかつて世界を席巻していた製造業、日本の地方創生の基盤となる 農業ビジネスの両者において今後不可欠と思われる新産業への転換（既存の産業の 活性化を超える）の観点から日本と海外の比較研究を通じてその方法論を論じる。 その比較対象は、まず製造業において、ダイキンとアップルという日米企業を比較 し、次に一次産業が主流であるオランダの農業ビジネスを取り上げて、日欧の国策を 比較する。本研究では、事例ベースのアプローチに加えて、量的および質的データを 組み合わせた混合方法論を採用する。 その焦点は、従来の産業分類等にとらわれない異分野融合にある。そのため、日本 と海外の製造業、農業を比較し、成功している海外企業との差分として、日本には 「異分野融合」のしくみや能力が整備されていないことを明らかにする。その目的を 従来の産業分類を超えた新しい産業を生み出すこと（構想力）とし、そのしくみ造り のために、デジタル化を背景とした「異分野融合イノベーションのための知識創造モ デル」を提案し、新産業形成をモニタリングするための有用な方法論的基盤を提供す る。一次・二次・三次といった従来の産業分類の境界をデジタル化によって越えるこ とが肝要である。 IMD による世界デジタルランキングの 54 の因子を分析して、提案する「異分野融合 イノベーションのための知識創造モデル」の妥当性と、デジタル競争力は異分野融合イ ノベーションによる新産業形成のための必要十分条件であることを検証する。結果と して、即ち、日本のデジタル競争力を高めるには、（１）地方創生に Web3.0 など最先 端のデジタル技術を導入することにより、高齢化する社会にデジタルに精通した若い 層を自然と引き込み、（２）製造業には欧米型世界観を取り入れつつも既存の産業の枠 組みを超え、（３）デジタル庁がオランダのような国策をもとに、デジタルを介した異 分野融合イノベーションの枠組みを整備する(未来へ備える)ことで、従来の製造業・ 農業といった区分を超える新産業形成が容易になるといえる。 ; This study explores methodologies for transitioning to new industries through comparative research between Japan and other countries. It emphasizes the importance of this transition not only in Japan's once-dominant manufacturing sector but also in its agricultural sector, which is vital for regional revitalization. The focus extends beyond merely revitalizing existing industries, aiming to foster innovative and sustainable industry growth. The subjects of comparison in this study are twofold. Firstly, it compares Daikin, a Japanese manufacturer, with Apple, an American company, in the manufacturing sector. Secondly, it examines the agricultural business in the Netherlands, a country where primary industry is predominant, to contrast Japanese and European national policies. The research utilizes a mixed-methods approach, incorporating case-based analysis, quantitative data, and qualitative insights. The study focuses on interdisciplinary innovation, transcending traditional industrial classifications. It reveals that, in comparison to successful international counterparts, Japan lacks the mechanisms and ...